1950年代からアメリカやヨーロッパなどを中心に活躍するカルフォルニア出身のアーティスト、デイビッド・シンプソンの、1965年以降の50年間にわたって制作された作品群を包括的にまとめた作品集。1980年代末には、彼の初期のキャリアを特徴づけるハード・エッジ（*1）の抽象的なスタイルから、錬金術的な技法を駆使したモノクロームの作品へと移行した。金属質の干渉塗料を使用した滑らかで活発な表面はまるで小さな鏡として機能し、より複雑なパターンで光を反射する。もはや絵画という概念を超え、光というメディウムそのものと一緒に遊ぶことになる。
近年は、例えば光の状態の変化とともに見え方が変わるような、周囲の環境との相互作用によって生まれる作品を制作する。平面表現を通じて無限の空間を演出するだけでなく、観る者にそこに創出された環境を探求するように促す。ごくわずかなモノの見方の変化とともに、燦然と輝くキャンバスが変貌を遂げていく。

*1 ハード・エッジ：平面的な形態と色彩をシャープな輪郭によって処理してゆく絵画のこと。
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