本書の写真は、2003年から始動したとあるプロジェクトの一環である。彼は北極圏やチェルノブイリによって汚染された地域、オクシタニア（南フランスを中心とした一帯）のピエモンテの山脈にある高原に頻繁に戻りながら活動を続けており、一連の写真はこのプロジェクトへのプロローグを構成する。作家にとってこれらの写真は、故意的に人間が欠如した形で進化の跡を辿るという自身の情熱に対する尺度を表しているのだ。
本書に収録された40点以上の写真は、時に抽象表現になりながらも極めて定型化されたものであると同時に、信頼のおけるクオリティに仕上がっている。ルネ・ドーマルによる小説[類推の山（Mont Analogue）]によるふたつの重要な道筋によって、一連の作品を深くみていくことに繋がるはずだ。
close