[Retracing]とは、知覚・記憶・写真と、イメージがないということにおける可能性についてのリサーチ・プロジェクト。レイン・イェル・テルプストラは徐々に視覚を失いつつある人たちに対して、もっとも貴重な視覚的記憶やコダクロームのディアポジティブ（透明陽画）で捉えたそれらの光景について尋ねた。そして、彼らにそれらのイメージが彼らの心のなかで追想されるように、数年後そのイメージの正確な描写を読み聞かせることを約束した。この本は別離と喪失をテーマとしている。知覚はその自然性を失い、写真はイメージの会話のなかで多義的な役割となる。本にするにあたり、テルプストラは三部からなるスライド・インスタレーションのイメージを用いた。イメージ同士がゆっくりと溶け込んで消えてゆく現象を、スライドをみせるページと暗闇のなかで投影画をみせるページによって表現し、わずかに透ける紙がフェードする効果を創りだしている。
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