ルハルト・リヒターが1972年、グリーンランドへの旅行から持ち帰った写真を見ていると、読者は冷気を実際に肌に感じることができるような錯覚を覚えるだろう。氷と雪の広がり、がれ場やごつごつした崖、氷山や浮氷がグレーブルーの水面に反射する。これらの多くがリヒターのペインティングに出てくるモチーフだ。本書は、写真、テキスト、余白の3つの構成要素をそれぞれ8.5×13cmの等比で構成している。さらにリヒターは、本書を表と裏の両サイドから読み始めることができるように構成しているが、これはテキストが始まる場所を読者が選べるようにするためだ。意図はシンプルだが、見開きページやときどき天地が逆転した写真が表れる効果は視覚的驚きを与える。またこの『EIS』は、リヒター自身が過去数年にわたり多くの時間と手間を費やしてきた自発的なアーティストブックシリーズの一環でもある。
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